古流剛柔空手道連盟の昇段級位審査に挑戦しました 三木町

古流剛柔空手道連盟の昇段級位審査が11月12日に香川県木田郡三木町で行われました。

少年部の審査

この日はいつも審査会場としている農村環境改善センターが工事のため使用できないので、少年部(主に小学生で一部中学生や幼稚園児も参加)の審査は三木町内の小学校の体育館を借りて行われました。11月とはいえ冷たい雨模様の天候で体育館は底冷えがしました。
香川県県内の3道場から21名が受験しました。コロナ禍以降は筆記試験を各道場で済ませてくるので、この日は基本・移動、型、組手の順で審査が行われました。

(1)基本・移動

まずは基本と移動です。丸亀道場からは8名が参加しました。うち2名は初めての受験でしたが、皆寒さを物ともせず、日ごろ以上にきびきびとした突きや蹴りを繰り出してくれました。ただ、相変わらず声(気合)が小さい子供が多かったので、来週からは声出しに気を付けて指導しなければと思いました。案の定、審査後の審査員総評の中で「気合がまだまだ小さい」との指摘がありました(丸亀道場に限ったことではありませんが)。

(2)型

 型の審査では、受験する級位に応じて指定された型を各自二つずつ披露します。気息を使わないといけない三戦(サンチン)と転掌(テンショウ)という時に大きな気息が出ていない子供が多数見られました。これも道場に帰ってからの課題だと感じました。声を出すこと(気合)や息を大きく吸ったり吐いたりすること(気息)は、普段できなくても審査の時はできるような気もしますが、やはり普段できていないことは審査でもできないことを再認識しました。

 けれども、皆自分のペースでしっかりと演武をすることができ、稽古の成果は見て取れました。

(3)組手

 古流剛柔空手道は子供でも寸止めではありません。さすがに顔面は顔のすぐ横を逆突きで抜いてくれるのでダメージはありませんが、中段以下はまともに蹴られたり突かれたりするので、相手の打撃に耐えるだけでなく、それに臆することなく防御したり攻撃を繰り出す必要があります。昇給審査では最後にして最大の関門です。

 丸亀道場の子供たちは強い相手にも臆することなく攻撃や防御ができ、自分よりも小さい子供を相手にした時は相手への配慮もできていました。初めて昇給審査を受けた小学1年生の女子と年長さんの男子もしっかりと攻撃を決めるシーンもあり上々の出来でした。

 中でも、小学5年生の男子は自分の受験級の相手との対戦を終えた後に、それよりも上の級を受験する子供達全員とも対戦し、対等以上に戦い抜きました。

 結果、全員が合格を勝ち取りました。さらに、小学5年生の男子は少年部の2級を受験したのですが、飛び級で1級補に合格しました。

 中学2年生の男子は少年部としては最高位の1級を受験し見事合格しました。本来ならもう少し早く合格させてやりたかったのですが、閉鎖されることになった他の道場(我々の流派ではない)から移籍してきた際に白帯から再度挑戦させたので時間がかかってしまいました。白帯からのスタートにも腐ることなく、前の道場とは異なる基本や型、組手のスタイルを地道にマスターするなど、他の研修生とは異なる努力もあったと思うので、本当に良かったです。

一般の部の審査

 午後の一般の部の審査は、小学校の体育館が借りられなかったので池戸にある古流剛柔空手道本部道場で行われました。大人の審査を行うにはかなり手狭ではありますが、しっかりとした造りでどんなに暴れてもびくともしません。この流派を開いた植村和永(うえむらまさのり)先生の写真が飾られているうえに、巻き藁などの関連装備も整っていますし、何といっても先人たちの血と汗の歴史が感じられる我々のルーツに他なりません。道場の壁に掛けられた一門の門下生の札の中には私の物も健在でした。

 一般の部の審査には、香川県内から2道場と1大学、徳島県内から2大学(OB含む)の計14名が参加しました。

(1)基本・移動

 まずは5級受験者からです。このクラスには丸亀道場に頻繁に出稽古に来る香川大学の1回生3人も参加しました。

次のクラスには4級を受験するマコトと3級を受験する中学3年の男子とノリコさんが参加しました。中3男子は自分から挑戦したいと言い夏からハードな稽古を続けてきました。ひと月ほど前には稽古中に左手の小指にヒビが入ったのですが、何事も無かったかのようにこの日の審査に臨みました。

さらに有段のクラスには稽古の号令をとるなど丸亀道場でも指導者として活躍してくれている銭形道場所属のユウジと香川大学の四回生タケアキが初段補を目指して参加しました。

丸亀道場関係者だけでなく、参加者全員が日ごろの充実した稽古が感じられるきびきびとしてしまった基本動作を披露してくれました。さすが一般の部はやる気が一味違うなと感じさせられました。

(2)拳足

 突きや蹴りといった打撃技が基本どおり正確に繰り出されているか、威力は十分かなどを審査するものです。普段は畳を立てた壁を相手に行っていますが、本来は巻き藁という手の拳や足の打撃部を鍛える道具を使って行うものです。本部道場には巻き藁が設置されているので今回は本格的な拳足の審査となりました。

 本部の巻き藁は硬くて鍛えた有段者が突いても結構痛みを感じるのですが、各受験者とも力のこもった打撃を繰り出していました(さぞかし痛かったかと思います)。

(3)型

型の審査は少年部と同じく受験する段級位に応じて指定された型を各自二つずつ披露します。

皆、日ごろの稽古を積み重ねてきたことが伺える演武を見せてくれました。特に、初めて受験した香川大学の1回生達はきびきびとした動きができていただけでなく、3名の動きが揃っており迫力と美しさを感じさせるものでした。

(4)組手

組手は道場が狭いことから、1~2組ずつ行われました。至近距離から見られるので何時にも増して迫力ある攻防が繰り広げられたように思います。

香川大学生は、丸亀道場への出稽古でユウジ、マコト、ノリコさんなどの相手をしてくれたり、本部道場の上原師範代の特訓を受けたりと熱心な稽古の成果が十分に発揮されていました。特に女子学生は1週間前の丸亀道場での稽古の際に右手小指を骨折したのですが、それを物ともせず右の突きをどんどん繰り出していました。

マコトとノリコさんは少年部の子供達から見るとお父さんお母さんの世代なのですが、若い大学生を相手に積極的に技を繰り出していました。ただ、マコトは本部道場の猛者と対戦した際、倒されて決めを入れられた後に立ち上がる時に相手から目線を離してしまうことがあり、その際に相手から何度も攻撃を繰り返されました。

強い相手に決めを入れられることは仕方ないのですが、古流剛柔空手道では負けた後も審判がヤメと言った後も決して相手から目を離してはならないのです。そのような行動をとった場合は対戦相手が追加攻撃を加えてきます。

このような組手のルールは、古流剛柔空手道の開祖である植村範士から叩き込まれたもので、「戦うときは武士道精神を尊び、常に戦場と心得え一時も相手から目を離すな」とよく言われたものでした。植村範士が亡くなられて9年半、ともすればこの厳しさが薄らぎつつある中で、さすが本部道場には脈々と受け継がれていることを実感し、丸亀道場も見習わなければならないと思いました。ただ、マコトにとっては災難だったことでしょう。

中学3年の男子は体格に恵まれている訳ではないのですが、大きな大学生を相手にうまい組手を繰り広げ有利に戦いを進めるシーンが数多く見られました。特に最後の組手では大学四回生をきれいに投げて顔面の横にすばやく決めを入れ、審査員からも歓声があがりました。

ユウジは初段補を受験したのですが、その対戦を終えた後に初段受験者と同様の対戦もこなしました。本人的には自分が思っていたようなパフォーマンスには及ばなかったようですが、他の初段補受験者とは一味違う余裕を感じさせる動きでした。

結果、全員が合格し、ユウジは飛び級で初段合格となりました。古流剛柔空手道では初段以上の者は道場を持つことを許されます。いきなり道場を持つことはないとは思いますが、銭形道場で今後指導者の一人として活躍することを期待しています。

文責:宮下武則(ぼやけている写真が数多くありますが、ビデオから切り取ったのでご容赦ください)